建設業に関わる人なら経営事項審査という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。
経営事項審査、略して経審は、公共工事の入札に参加する上で不可欠な審査です。
今回の記事は、経審について大枠が理解できる内容となっています。
公共工事の入札参加を考えている人や、建設業許可の大枠を学んでいる人に向けた記事です。
経営事項審査とは
経営事項審査とは、建設業許可業者が公共工事を国や地方自治体などから直接請け負うため受けなければならない審査のことです。
略して経審と呼ばれるこの審査は、建設業法第27条の23で規定されています。
経審の結果(総合評定値)は国や地方自治体での入札参加資格審査に活用されます。
経審申請から入札参加資格審査の流れ
経審の申請先は建設業許可を申請した都道府県です。
愛媛県の場合は各エリアの地方局建設部、土木事務所です。
申請の流れは以下の図の通りです。
経営事項審査の項目
経営事項審査は、公共工事の入札に参加を申請する建設業許可業者の経営状況を客観的に審査するものです。
審査項目は大きく分けて以下の2つです。
経営状況分析
経営状況分析は、自社で行ったものは認められません。
国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」に必要資料を提出して行います。
登録経営状況分析機関は全国に10か所あります。(詳しくはこちらの国土交通省HPをご覧ください。)
算出は以下の8つの指標を基にします。
経営状況【Y】の分析指標 ()内は影響度 | 算出式 |
純支払利息比率(29.9%) | (支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100 |
負債回転期間(11.4%) | (流動負債+固定負債)÷(売上高÷12) |
総資本売上総利益率(21.4%) | 売上総利益÷総資本(2期平均)×100 |
売上高経常利益率(5.7%) | 経常利益÷売上高×100 |
自己資本対固定資産比率(6.8%) | 自己資本÷固定資産×100 |
自己資本比率(14.6%) | 自己資本÷総資本×100 |
営業キャッシュフロー(5.7%) | 営業キャッシュフロー÷1億(2年平均) |
利益剰余金(4.4%) | 利益剰余金÷1億 |
経営規模等評価
経営規模、技術的能力その他の事項を国土交通大臣または都道府県知事が評価します。
項目区分 | 審査項目 |
経営規模【X1】 (業種ごとに審査) | 年間平均完成工事高 |
経営規模【X2】 (一業者全体で審査) | 自己資本額 利払前税引前償却前利益 |
技術力【Z】 (業種ごとに審査) | 技術職員数(業種別に点数化) ・1級管理受講者…6点 ・1級国家資格者…5点 ・監理技術者補佐…4点 ・基幹技能者、レベル4技能者…3点 ・2級国家資格者、1級技能士、レベル3技能者…2点 ・その他の技術者…1点 年間平均元請完成工事高 |
その他の審査項目 (社会性等)【W】 (一業者全体で審査) | 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況 建設業の営業継続の状況(営業年数) 防災活動への貢献の状況 法令順守の状況 建設業の経理の状況 研究開発の状況 建設機械の保有状況 国又は国際標準化機構が定めた規格による登録の状況 |
経営状況(Y点)+経営規模等(X点)(Z点)(W点)=総合評定値(P点)
総合評定値の算出方法
経営事項審査の結果は「総合評定値」といいます。
建設業者の経営状況と経営規模等を前述の算出方法により数値化することで、客観的な評価ができます。desu
総合評定値(P)=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
経営事項審査の有効期限
経審の有効期限は審査基準日から1年7か月です。
1年7か月って中途半端な気がするけど?
経審は審査基準日=決算日です。決算日から決算変更届、経審申請を行う目安は4か月以内です。
申請後、結果通知が出るまでには概ね1か月かかります。
1年7か月の「7か月」の間に、経審結果通知を受け有効期限の切れ目がないようにすることが必要です。
経営事項審査にかかる費用
経営事項審査を受けるには「経営状況分析」、「経営規模等評価」、「総合評定値」のそれぞれに申請手数料がかかります。(建設業法施行令第27条)
経営状況分析申請(Y評点)
10か所の登録経営状況分析機関それぞれが設定しています。申請を行う先の登録機関で確認下さい。(国土交通省HP)
経営規模等評価申請(X・Z・W評点)
基本手数料の8,100円に1業種に2,300円を加算した金額です。
総合評定値の請求(P)
基本手数料の400円に1業種につき200円を加算した金額です。
まとめ
経営事項審査は、建設業許可業者が公共工事を請負うために必要な審査です。
経審には経営状況分析と経営規模等評価があり総合評定値を算出します。
評定値によって受注できる公共工事の規模や件数に影響があります。
評定値をアップさせていくことが事業の安定・拡大に重要です。
経審を受ける前に試算して、今後どういった取り組みをするか戦略的に取り組むことがポイントです。