もともと、社会保険加入は建設業許可の要件ではありませんでした。令和2年10月1日から改正建設業法が施行され、以降「適切な社会保険への加入」が義務化されています。
社会保険という言葉は聞いたことあっても、具体的に何を指すのかはよくわからないという方もいます。また一口に社会保険といっても、業界やシチュエーションによって何を指すのかが変わる場合もあります。
ここでは、建設業許可において社会保険とは何を意味するのか?わかりやすく解説します。
この記事で建設業許可取得に当たり、絶対に知っておかなければならない社会保険のポイントについて知っていただけると思います。
そもそも【社会保険】とは?
社会保険とは、社会生活を営む上で起こりうるリスクに備えるための公的な強制保険制度のことです。
国や全国保険協会(協会けんぽ)などの公的な機関が保険者として運用し、被保険者の働く方々の万が一の場合に給付を行う仕組みです。
具体的には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険があります。
一般的に社会保険というと、狭義には健康保険、介護保険、厚生年金保険を指し、広い意味では雇用保険、労災保険までを指します。
建設業許可でいう【社会保険】とは?
愛媛県発行の建設業許可手引書には建設業許可の要件の一つとして「適切な社会保険に加入していること」と書かれています。
ここでいう「社会保険」とは健康保険、厚生年金、雇用保険を指します。
労災保険は建設業界はちょっと特殊。「工事現場単位」で原則元請けに労災加入が義務付けられてるんだよ。
【健康保険】
健康保険制度は、事業主と雇用者が保険料を出し合い病気やけがなどをした際に必要な医療費などを給付して相互の助け合う制度です。
病院へ行ったときに受付で保険証を提示する、アレよね
【厚生年金保険】
年金制度は、働く人と事業主が保険料を出し合い従業員が65歳以降年金として受け取れる公的制度です。
【雇用保険】
雇用者が加入する保険制度で、事業主は加入できませんが保険料は事業主も負担します。
失業した際の失業給付金や再就職に向けた教育訓練などを提供する制度です。
建設業許可でいう【適切な社会保険】とは?
次に、「適切な」社会保険ついてご説明します。
下の表は、建設業事業者の形態や雇用形態に応じた適切な社会保険を表にまとめたものです。(※国土交通省HPより)
国保は収入を基準に保険料が決まるので、単身で一定以上収入がある人は建設国保がお得だよ
建設国保は家族が増えると保険料が高くなるよ
社会保険加入が許可要件になった背景
建設業界では、以前は社会保険未加入企業が多くありました。
社会保険未加入の場合、病気やけがなど万が一の場合に十分な保障が受けられないリスクや、従業員が将来的に年金など保障を十分に受けられないリスクがあります。
これにより将来建設業界を目指す人材が減り、建設業界の衰退につながることを問題視した国や業界団体は、平成24年以降一体となって対策を進めました。
平成29年以降は元請け企業に対し社会保険未加入の企業や作業員を現場入場させない働きかけもしています。建設業許可にかんしても、令和2年の法改正で社会保険の加入が要件に加えられています。
適切な社会保険に加入してないと営業停止や許可取り消しの厳しい処分の可能性があるよ。
社会保険加入を逃れるための「偽装一人親方」ももちろんだめだよ
まとめ
今回は、建設業許可を取得するために必要な要件である「社会保険」について解説しました。
社会保険については、「なんとなく」理解している人がほとんどではないでしょうか。普通に暮らしているだけならそれでも問題ありません。
しかし、建設業許可を取得するためには社会保険の全容や、建設業許可に必要となる「適切な社会保険」についてしっかりと理解することが大切です。
また、社会保険加入が建設業許可の要件となった背景を知ることにより、建設業界に対する理解も進みます。建設業許可を取得した後も、会社の運営や社員など関係者との良好なコミュニケーションにもなどに役立つと思います。